ビジネスシーンでスマートに:上着(ジャケット・カーディガン等)の美しい着脱と扱い方
導入:なぜ上着の着脱・扱い方が重要なのか
日々のビジネスシーンで、私たちは無意識のうちに様々な所作を行っています。その一つに、上着(ジャケットやカーディガンなど)の着脱や扱い方があります。一見些細な動作ですが、実はこの所作が、周囲に与える印象を大きく左右する要素となり得ます。
会議室への入退室、お客様へのご挨拶、会食の場など、上着をスマートに扱えるかどうかで、その人の立ち居振る舞いの美しさや洗練度が際立ちます。多忙なビジネスパーソンにとって、効率性は重要ですが、同時にプロフェッショナルとしての信頼感や品格も求められます。美しい所作は、言葉以上に多くを語り、あなたの印象を向上させる強力なツールとなります。
この記事では、ビジネスシーンで頻繁に行われる上着の着脱と、その後のスマートな扱い方に焦点を当て、基本となる所作と、より美しく見せるためのポイントを解説いたします。これらの所作を身につけることで、あなたはより洗練された、信頼に値する印象を周囲に与えることができるでしょう。
上着の美しい脱ぎ方の基本
ビジネスシーンにおける上着の脱ぎ方には、いくつかの基本がございます。状況に応じて使い分けることで、スマートな印象を与えることができます。
タイミングを意識する
- 訪問先や会議室に入る前: 基本的には、建物に入る前や会議室の扉を開ける前に脱ぐのが丁寧な所作とされています。これにより、室内で慌てて脱ぐ様子を見せることなく、スムーズに場に入ることができます。
- 着席する前: 会議や会食などで着席する場合、椅子に座る直前に脱ぐのが自然です。
立ちながら脱ぐ方法
- まず、ジャケットやカーディガンのボタンを外します。
- 片方の肩から、袖をゆっくりと抜きます。この際、無理に引っ張らず、肘を軽く曲げながらスムーズに行います。
- 反対側の肩から袖を抜きます。
- 両袖が抜けたら、裏地が見えるように優しくたたみます。背中側の部分を持ち、左右の肩部分を重ね合わせるように二つ折りにすると、裏地が外側になります。
- たたんだ上着は、片方の腕にかけます。この際、袖がだらりと垂れ下がらないように、肘にかけるなどしてコンパクトにまとめます。
座りながら脱ぐ方法
着席後に上着を脱ぐ必要がある場合は、立ちながら行うのと同様に丁寧に行います。
- ボタンを外します。
- 片方の袖からゆっくりと腕を抜きます。この際、椅子の背もたれに引っかからないよう注意が必要です。
- 反対側の袖からも腕を抜きます。
- 脱いだ上着は、立ちながら脱いだ場合と同様に裏地が見えるようにたたみ、椅子の背もたれにかけるか、持参した鞄の上に置く、膝の上にたたんで置くなどの方法で一時的に置きます。
上着の美しい着方の基本
上着を着る所作も、脱ぐ所作と同様に丁寧に行うことが大切です。
タイミングを意識する
- 退室する直前: 会議室や訪問先から退室する直前に着るのが自然です。出口付近で立ち止まり、周囲の通行の邪魔にならない場所で行います。
- 外出前: オフィスから外出する際や、寒い場所へ移動する際など、必要なタイミングで身につけます。
立ちながら着る方法
- たたんで腕にかけていた上着を広げます。
- 片方の腕を袖に通します。袖口から手が出る際に、無理に押し出すのではなく、自然に滑らせるようにします。
- 反対側の腕も同様に袖に通します。
- 両袖が通ったら、襟元や肩の位置を軽く整えます。
- 必要に応じてボタンを留めます。
美しい着脱のためのポイント
- 焦らない: どんな状況でも、焦らずゆっくりとした動作を心がけましょう。慌てた所作は、落ち着きのない、だらしない印象を与えかねません。
- 周囲への配慮: 特に狭い場所や通路での着脱は、周囲の人にぶつかったり、邪魔になったりしないよう、十分に気を配ります。可能であれば、少し場所に移動してから行いましょう。
- シワに注意: 脱いだ上着を乱雑に扱ったり、丸めて置いたりすると、シワの原因となります。裏地を表にしてたたむ、広げて椅子にかけるなど、シワになりにくい方法を選びましょう。
- 音を立てない: 着脱の際に、ハンガーや椅子の背に勢いよくかけたり、ボタンを乱暴に扱ったりして音を立てないように注意が必要です。
- 脱いだ後の置き場所: 会議室や応接室に椅子がある場合は、基本的に椅子の背もたれにかけます。その際も、裏地を表にしてかけると、ほこりがつきにくく、丁寧に見えます。椅子がない場合や、椅子の背にかけるのが難しい場合は、持参した鞄の上にたたんで置くか、膝の上にたたんで置きます。床に置くことは絶対に避けましょう。
応用例・実践例
- 会議室にて: 入室前に廊下で上着を脱ぎ、たたんで腕にかけ、入室。着席前に椅子の背に裏地を表にしてかける。会議終了後、退室する直前に立ち上がり、上着を羽織る。
- 来客対応時: お客様がお帰りになる際、お客様が上着をお召しになるのに合わせて、ご自身も必要に応じて上着を羽織る準備をする、あるいは丁寧に着る。
- 会食時: お店に入る前に上着を脱ぎ、お店の方に預けるか、渡されたハンガーにかける。着席後、背もたれにかけられる場合はかける。お食事中はシワにならないよう気をつける。
- 移動中(電車・タクシー): 車内では、脱いだ上着はたたんで膝の上に置くか、鞄の上に置く。吊り革などに無造作にかけるのは避けましょう。降りる直前にスマートに羽織る。
避けるべきNG例
- 席に着いた途端、乱暴に上着を脱いで椅子の背に放り投げる。
- 脱いだ上着をクシャクシャにして膝の上に置いたり、鞄の中に無理やり押し込んだりする。
- 上着を裏地を表にせず、表地が見えるように椅子にかける(ほこりがつきやすい)。
- 椅子がない場所で、上着を床や地べたに直接置く。
- 通路の真ん中や、他の人の邪魔になる場所で立ち止まって着脱する。
- 焦って着ることで、袖が裏返ったままになったり、肩周りがずれたりする。
まとめ
上着の着脱と扱い方は、日常的な動作であるがゆえに、意識しないと粗雑になりがちな所作です。しかし、この小さな動作を丁寧に、そして美しく行うことで、あなたの印象は格段に向上します。
今回ご紹介した基本的な手順やポイントを日々の生活やビジネスシーンで実践してみてください。最初は意識が必要かもしれませんが、繰り返すうちに自然と体に馴染み、あなたの立ち居振る舞いの一部となるでしょう。
美しい所作は、単なる形だけではなく、相手への配慮や自分自身を大切にする気持ちの表れでもあります。スマートな上着の着脱・扱い方をマスターし、ビジネスパーソンとしての信頼感と品格をさらに高めていきましょう。